日本で売れている商材でも、海外では全く必要とされていなかったり、そのままでは通用しないことがよくあります。なぜでしょう?それは国によってニーズが違うからです。海外販路の開拓・拡大を成功させるためには対象市場(国)の特徴を知り、現地向けの商材を提供する必要があります。
ここでは対象市場(国)のニーズを知ること、既存の商材を現地向けに見直すこと、必要に応じて商材再開発することの重要性を成功例を交えながら解説します。
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特定した対象市場(国)の特徴を知り、必要に応じて既存の商材を現地向けに見直す!
自社商品が売れる可能性について知る
新たな市場を開拓するにあたっては、人々の暮らしと密接に関わる現地の環境、文化、習慣、宗教、価値観についてしっかり把握し、対象市場(国)の消費者が求めているモノ・サービスは何か理解することが大切です。
対象市場(国)でのニーズを知る
対象市場(国)でのニーズを知るということは、売りたい商材が必要とされており売れる可能性があるかどうか知ることです。
10年前に、シンガポールの富裕層向けにヒノキ風呂を販売したいと来星された方がいらっしゃいました。ヒノキの香りによるリラックス効果や血流の促進効果があり、日本では富裕層の間で人気を博していると強調され、シンガポールでも複数の代理店候補となる企業との商談を希望されていました。しかし、来星した営業担当の方は、こちらでは湯舟に浸かる習慣がないことをご存じなかったようでした。
事前にシンガポールの習慣や生活・居住環境について把握していれば、来星されることなく別の国における市場の可能性について調査するために時間と経費を割くことができたのではないでしょうか。
自社商材を販売したくても、それを必要としてくれない市場にアプローチするのは無意味と言わざるを得ません。
ニーズとは何を意味するのか?
「ニーズに合った○○」、「ニーズに沿った○○」、「ニーズに応える」、などのように、「ニーズ」と言う言葉はビジネスの現場でも、日常生活でも頻繁に耳にする言葉です。マーケティングで「ニーズ」とは、人が生活するなかで求める欲求のことで「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」の2種類に分類されます。
- 顕在ニーズ
顧客自身が欲求を自覚している状態=顧客が自分ですでに分かっているニーズ - 潜在ニーズ
顧客自身が欲求を自覚していない状態=顧客が自覚していないニーズ
新たな市場で「ニーズを創る」ことが重要だと強調される方もいらっしゃいますが、ニーズという言葉の持つ本来の意味からすると少し的外れな表現ではないかと思います。また、マーケティング戦略では、価値を作って伝えることが重要だと言われますが、それはニーズを理解し市場の可能性があると判断できた場合に限ります。
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顧客のニーズに合わせて商品やサービスを見直す
マーケティングにおける視点では、顧客のニーズを追及して商品やサービスを作る「ニーズ志向」と自社の技術やアイデアを武器に新たな商品やサービスを作る「シーズ志向」が比較されます。弊社は、これまで海外で販路開拓のサポートに携わってきた経験から、より現実的である「ニーズ志向」 を重視します。
ニーズ志向のメリット
「ニーズ志向」と 「シーズ志向」 の大きな違いは商品やサービスを消費者目線で提供するか、生産者側の視点で提供するかです。後者でよくあげられる例がApple社の創設者スティーブ・ジョブ氏です。
ジョブ氏は「消費者はニーズが分かっていない」という考えから、生産側の志向のもと画期的な商品を世に送り出し、消費者の潜在ニーズに気付かせ購買行動を掻き立てることに成功しました。ただこれはジョブ氏だからこそ成し得た業績だと思います。
結局のところ、シーズ志向であっても、消費者のニーズを把握すると同時にそれを満たすことが出来なければ商品やサービスを売ることは難しいでしょう。
一方でニーズ志向の場合は、類似商品やサービスがすでに出回っており、既存商品との差別化などが難しいと言われますが、実際はそうばかりではありません。それにニーズ志向では、売れる可能性があることを前提に商材を提供できるという大きなメリットがあります。
プロダクトアウトの限界
「海外市場ではいいモノが売れるのではなく、売れたモノがいいモノである」・・・・・、本当にそう思います。メイド・イン・ジャパンには優れた商材が沢山ありますが、その多くが海外仕様ではありません。ここにプロダクトアウトの限界を感じます。
餃子の王将の「焼き餃子」が中国では受け入れられなかったという話は有名です。これは中国では水餃子が主流だからという単純なことではなく、中国の消費者が日本の「焼き餃子」にどんな価値があるのか理解できなかったか、あるいは理解できても満足に値するものでないと判断したからではないかと思います。
シーズ志向の考え方として「プロダクトアウト」という言葉があります。 日本のモノ・サービスをそのまま海外に売ろうとするのも「プロダクトアウト」的な発想であり、10年前に某企業さんがシンガポールでヒノキ風呂を売ろうとしていたのも同じです。マレーシアやシンガポールで大失敗に終わっている「クール・ジャパン戦略」もまさに「プロダクトアウト」でした。
対象市場(国)で求められていないのであれば、「プロダクトアウト」はただの自己満足です。海外で販路を構築するにはニーズを優先する「マーケットイン」の発想への転換が重要です。
マーケットインの成功例
「マーケットイン」とは、ニーズを最優先し消費者が必要だと感じ評価してくれる商品を企画・開発して提供することです。
焼き餃子でもタネ(具材)を変えることでシンガポールでの販路を構築し拡大した企業があります。長野県の餃子専業メーカー株式会社信栄食品さんで、もともとOEM生産を得意とするメーカーさんです。とにかく社長さんがフットワーク軽く、シンガポール市場について徹底的に調査されました。そして現地消費者の間で人気が高いサーモンの餃子を開発したところ人気に火が付き、某日系スーパーの催事ではトップセールスを記録しました。
焼き餃子だけでなく、現地の人気料理スティームボード(鍋)にも注目し、鍋にも合う餃子として紹介。多様なニーズに応えることで確実に販路を拡大していきました。今では複数の小売店で常時販売されています。徹底した調査でニーズを把握し、既存の冷凍餃子との差別化にも成功しました。
まとめ
今回はニーズを知ることの重要性について触れました。
日本でよく売れているモノ・サービスでも海外では全く売れないことがよくあります。その理由は現地消費者にとって必要とされないモノ・サービスだからです。
海外で販路を築くには、対象市場(国)のニーズを理解し、そのニーズに合わせたモノ・サービスを提供する必要があります。そのためにはプロダクトアウトからマーケットインの発想に転換する必要があります。
海外販路の開拓・拡大を成功させるための重要ポイント ニーズを知る ↓ 既存商材を見直す(そのまま勝負できる見極める) ↓ 必要に応じて改善・再開発する