地域的な包括的経済連携(RCEP)協定で東南アジアへの輸出はどう変わるのか?

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地域的な包括的経済連携(RCEP=アールセップ)協定が1月1日に発効しました。この世界最大の自由貿易協定は日本に輸出面で大きな効果をもたらしてくれると注目されています。

ここではRCEPについて同じ多国間の自由貿易協定であるTPPと比較して分かり易く説明し、RCEPにより日本から東南アジアへの輸出で知っておきたいポイントについて解説します。

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地域的な包括的経済連携(RCEP)協定とは

RCEPの概要

モノやサービスの国際取引(貿易)では各国の間で「関税(輸入されるモノに課せられる税金)」を含めたさまざまな障壁があります。RCEPは関税撤廃を基本として、特定グループ内で自由な貿易を推進しようと2012年から約8年越しで合意至った協定です。

参加国は日本、中国、韓国、シンガポール、オーストラリア、ブルネイ、マレーシア、ニュージーランド、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、カンボジア、ラオス、ミャンマーの15か国。日本にとっては中国・韓国との初めての自由貿易協定です

日本へのメリット

日本企業にとって最大のメリットは中国の巨大市場へのアクセスが容易となることです。今後、最大の貿易相手国である中国と3位の韓国への輸出の際、無税となる工業製品品目の割合は
中国 8%⇒86%
韓国 19%⇒92%
となります。その他、農林水産品でも複数の品目で段階的に関税が撤廃されます。

関税の低下によって輸出面では日本製品の競争力上昇が期待されています。自動車部品や日本酒など幅広い品目が関税撤廃の対象になっていて、関連業界にとっては追い風となります。特に恩恵を受けられそうなのは自動車関連や鉄鋼製品・家電製品などと言われています。また農林水産品も品目によっては段階的に関税が引き下げられたり撤廃されたりします。

輸入面では参加国から商品が安く調達できることが消費者価格にうまく反映されればメリットとも考えられるでしょう。

日本へのデメリット

参加国から輸入品が安く調達できるようになるというのは諸刃の剣で、日本国内の企業や生産者が価格競争に巻き込まれる危険性も含んでいます。
※ただ、日本は 米・麦・牛豚肉など重要な農産物5品目は関税撤廃・削減対象からすべて除外しています。

その他のデメリットとして、知的財産権を侵害する偽ブランド製品などが輸入され日本市場にでまわる危険性が懸念されています。 

TPPとの違い

参加国
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定環太平洋パートナーシップ(TPP)協定
日本日本
中国
韓国
オーストラリアオーストラリア
ニュージーランド ニュージーランド
シンガポールシンガポール
マレーシアマレーシア
ベトナム ベトナム
ブルネイブルネイ
タイ
インドネシア
カンボジア
フィリピン
ラオス
ミャンマー
カナダ
メキシコ
ペルー
チリ
日本にとってRCEPではインドの不参加、TPPでは米国の不参加が痛手
参加国の経済規模
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定  環太平洋パートナーシップ(TPP)協定  
GDPに占める割合  約30%約13%
参加国の合計人口 約22億人約5億人
RCEPはGDP、人口ともに世界のほぼ3割を占める
関税撤廃率
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定
91.5%99.9%
TPPより関税撤廃率が低い
その他の違い
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定
関税の撤廃・削減が主要な合意内容であるが関税面での例外事項が比較的多い緩い連携。高度な自由化が要求されるTPPに参加できなかった中国や東南アジアの国々がTPPに対抗できる独自の経済圏。「高度な関税撤廃」に加え、共通の労働・環境基準の設定や国有企業の規制など、自由で開かれた貿易を阻害する様々な壁を取り払うところまでターゲットにしている。関税面での例外事項が比較的少なく加盟国はより濃密で深いパートナーとなることを意味している。
治・経済の両面で価値観の合う国が連携してそれぞれ発展してこうというのが経済連携協定の本質

東南アジアへの輸出で知っておきたいポイント?

数量政策学者の高橋洋一先生によると、歴史を紐解くとRCEPはASEANを経済圏に取り込みたい日本と中国の思惑が交じり合ってできた自由貿易協定だそうです。それだけ重要視してきたASEAN市場への日本からの輸出はRCEPによりどのように変わるのでしょうか?

関税撤廃と貿易に関するルール・手続きの共通化

農林水産品ではインドネシア向けに牛肉などが段階的に関税撤廃されることが決定済みです。今後はこれ以外にも農林水産品のASEAN域内への輸出増加が期待されています。

工業製品では、エレベーターのように関税が即時撤廃される製品があります。すでにタイなどに生産拠点を持つ日本の企業は高性能な重要部品をこれまでより簡素化した手続きのもと安くタイの関連メーカーに販売(輸出)することが可能となります。

RCEPでは貿易に関するルール・手続きが共通化され、これまで手続きが煩雑でコストが高いなどと指摘されてきた原産地規則に関しては、障害が取り除かれ利便性が増すと期待されます。

ルール適用のからくりと課題

先進国のなかで日本は自由貿易のハブ的役割を果たしており、すでに複数の自由貿易協定を結んでいます。日本のようにRCEPにもTPPにも参加している場合は、基本的には「関税の撤廃率が高い方を優先する」というルールが適応されます。

例えば関税撤廃率がRCEPが91%でTPPが99%の場合はTPPが優先されます

RCEPに参加するASEAN諸国のうち4カ国(シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ)はTPPにも加盟しています。また、RCEP参加国のほとんどが今でも‟特恵関税”の対象国かTPP加盟国であることを考えると関税面での新規メリットは少ないのではないかとの見方もあります。

ただしRCEPを上手く活用することで東南アジアにすでに進出している企業や域内へ輸出している企業などはより大きな恩恵を受けることが可能となります。一方で、これから販路開拓も含め海外事業に着手しようとする中小企業にはRCEPの活用するため、国や自治体からノウハウの提供や補助金の支援が必要となると予想されます。

まとめ

地域的な包括的経済連携(RCEP=アールセップ)協定とは

  • 日本、中国、韓国、シンガポール、オーストラリアなど15カ国が参加する世界最大の自由貿易協定
    世界のGDP、人口ともに約30%をカバー
  • 日本にとって最大の貿易相手国である中国と3位の韓国とはいずれも初めての経済連携協定
    輸出の際、無税となる工業製品品目の割合
    中国 8%⇒86% 
    韓国 19%⇒92%
    ※日本企業にとって最大のメリットは中国の巨大市場へのアクセスが容易になること!
  • 関税撤廃率はTPPの99.9%より低い91.5%。しかもTPPより関税面での例外が多い

東南アジアへの輸出はどう変わるか?

  • 東南アジア向け輸出では対中国・対韓国への輸出ほど関税面での新たなメリットは少ない
  • 東南アジアにすでに進出している企業や域内に輸出している企業などはRCEPを活用することでより大きな恩恵を得られる可能性がある
  • 海外事業にこれから着手しようとする企業には不利⇒RCEPを活用するため国や自治体からノウハウや補助金の支援が必要 

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