シンガポール人の死刑制度に対する意識の変化

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kamobsコラム Vol.3~

シンガポール政府は先ごろ、死刑制度について内務省が定期的に実施している世論調査の結果を公表した。

昨年実施された調査の結果によると、国民の80%以上が「死刑に犯罪の抑止力」があると信じており、犯罪行為別の死刑支持率は
「意図的な殺人」 81%
「銃器犯罪」 71%
「麻薬密売」 66%
と高かった。

2019年以前の調査でも死刑制度に賛成する国民が大多数を占めたが、今回の調査結果では前回同様
麻薬密売人の死刑に対する若いシンガポール人の支持が全国平均を下回るなど、死刑制度に対する意識も少し変わりつつあるようだ。

シンガポールはあらゆる犯罪行為に対する規制や処罰が厳しいことであまりにも有名な国の1つ。場合によっては死刑を含む重い刑罰が科せられる。麻薬関連犯罪にも厳しく、一定量以上の所持、密売、密輸入には死刑が科せられるケースが少なくない。

そんなシンガポールは死刑制度とメイド問題で、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルに非難されることが多い。

最近、アムネスティや死刑廃止を訴えるTransformativeJustice Collective(TJC)などがシンガポール政府に強く求めているのが、麻薬を密輸したマレーシア人死刑囚に対する刑の執行停止だ。

この死刑囚は2009年、ヘロイン43グラム(テーブルスプーン3杯ほどに相当)をシンガポールに密輸したとして逮捕され、翌年死刑判決が言い渡された。同死刑囚が知的障害を抱えていることが医療専門家によって証明されたにもかかわらず、裁判では死刑判決が言い渡された。

SNS上でも知的障害者の死刑執行は国際法違反であると刑の執行を停止するよう求める動きが活発となり、マレーシア国内でもシンガポールの決定に反対する活動が起きた。シンガポール大統領に減刑を求める嘆願書には6万人以上が署名。こうした動きもあり、刑の執行は延期されたままになっている。

世界的な死刑廃止の流れに逆行しているシンガポール。死刑が犯罪の抑止力となっていると主張する国では、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)中の2020年5月にZoomで死刑判決が言い渡し世界中から非難を浴びた。しかし、実際には過去2年、死刑は執行されていない。

マレーシア人死刑囚に対する再審は近々行われる予定だそうだ。このタイミングで死刑制度についての世論調査結果を公表した意図は何か? 再審に注目したい。


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