環境保護団体は、森林保護を目的にパーム油の販売を厳格化するEUの新法に対するインドネシアとマレーシアの動きを、森林保護の取り組みを弱体化させるものだと非難した。
グリーンピース・インドネシアのグローバル森林キャンペーン責任者であるキキ・タウフィック氏は、インドネシア政府がEUの新規制導入をパーム油貿易に対する‟差別”だとして、EUへのパーム油輸出停止も含めマレーシアと協力することで合意したことに懸念を表明した。
EUは、2030年までに燃料に使用するパーム油の使用を段階的に廃止することを目指しており、昨年12月には、パーム油製品などEU域内に輸入する際、自社のサプライチェーン(供給網)が森林破壊に関与していないことを証明することを義務化した。
ジョコ・ウィドド大統領は12月にブリュッセルで開催されたアセアン・EU首脳会議で、この法律について「柔軟性に欠けるやり方はインドネシアの発展を阻害する」と不支持を表明。これに対してキキ氏は、EUの森林破壊規制を差別的なものとして捉えるのではなく、透明性と持続可能性を通じて森林破壊を減らすという世界的なコミットメントを前進させる機会として捉えるべきであると述べた。
同氏は、EUの規制が脅威となるのは、インドネシアとマレーシアがパーム油開発に起因する森林破壊を止められない場合に限ると強調。インドネシアにはすでに、原生林開発のモラトリアムや2030年までの森林・土地利用純減目標など、森林破壊を止めるための独自の公約もあるという。
マダニ財団のエグゼクティブディレクターであるナディア・ハダド氏は、EUの森林破壊規制はパーム油に限定しておらず、大豆などの他の商品も影響を受けると指摘。そのうえでパーム油はヨーロッパ諸国が生産する菜種油やひまわり油と比較されることが多いが、後者の作物の農場は森林破壊を引き起こしていないと主張した。
加えて、ナディア氏は、ヨーロッパの新規制は、インドネシアがパーム油のガバナンスを改善し、インドネシアの気候変動に関する公約を達成するための機会ととらえるべきで、持続可能で森林破壊のないパーム油産業を実現するために、もっと対等なパートナーシップをEUに要求すべきだったとの見解を示した。
一方で、インドネシア・パーム油協会(Gapki)は、いわゆるパーム油差別と戦う大統領の計画を歓迎し、インドネシアとマレーシアは植物油の最大生産国としてさらに協力関係を強化する必要があると述べた。Gapkiのスポークスマンは、インドネシアとマレーシアは、非パーム植物油生産者からの差別とネガティブキャンペーンに直面し続けているとEUを非難した。
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