昆虫サイボーグの研究で知られる南洋理工大学(NTU)佐藤裕崇准教授が、ごくわずかなスペースにも入り込むゴキブリに注目し、ゴキブリサイボーグで災害救助の効率化を図る研究を行っている。
同研究はシンガポール内務省傘下の法定機関Home Team Science and Technology Agency (HTX)とエンジニアリング会社Klass Engineering and Solutionsとの共同で行われているもので、5年後の実用化を目指す。
災害現場の救助チームの味方になるゴキブリはマダガスカルから輸入。人間の10倍の放射線に耐えることができ、生命力が強い。成虫で体長は6cmとシンガポールに生息する品種より2cmほど長く、複数のセンサー機能を持つ5.5gのバックパックを取り付けるのに十分な大きさである。
ゴキブリサイボーグには生存者を確認するための温度検知機能付き赤外線カメラが搭載され、人を検知するアルゴリズムが使用されている。これまでの研究で人間とそれ以外の生物を検知する精度は87%に達している。
ゴキブリサイボーグに装着されるバックパックにはマイクロコンピューターが備え付けられており、ゴキブリの神経筋部位に電気信号を送ることで動きを指示する。研究は開発段階にあり、エンジニアがチップとセンサーの最適化に取り組んでいる。
また、今後はバックパックの動作時間を長くするために、バッテリーに太陽電池とバイオ燃料電池を使用することが検討されている。最終的にはバックパック自体をより軽量でコンパクト化する。
研究チームでは、5平方キロメートルの捜索エリアに必要なゴキブリサイボーグは500匹と見積もっている。
佐藤准教授は、「2011年3月11日の発生した東日本大震災で、一番最初に救助隊を日本に派遣したのがシンガポールで、同じ年にNTUの准教授に就任しNTUからの支援で昆虫サイボーグの研究に取り組んでいる」と述べ、自身の持つ技術でシンガポールの救助任務に貢献することを切望している。
ソース
関連情報
【シンガポール】パイナップルの葉から痩せるサプリを製造へ、NUSが研究開発