【シンガポール】製造業生産、前年同月比増加も市場予想を下回る

シンガポール
Analysts said the outlook for Singapore’s key manufacturing sector is uncertain, with the effects of looming tariffs yet to seen. PHOTO: ST FILE

シンガポールの製造業生産高は、前年同月比で9か月連続の増加となったが、市場予想を下回った。経済開発庁(EDB)が4月25日に発表したデータによると、3月の工場生産高は前年同月比で5.8%増となり、2月の0.9%増(上方修正後)から加速した。ただし、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の8.1%増には届かなかった。

バイオ医薬品製造を除くと、3月の生産高は前年同月比で4.9%増となった。一方で、季節調整済み前月比では3.6%減少しており、勢いの鈍化がうかがえる。バイオ医薬品製造を除いた場合は、前月比で0.8%増であった。

アナリストらは、シンガポールの主要産業である製造業の先行きは不透明であり、今後の関税措置の影響が懸念されると指摘している。

OCBC銀行のチーフエコノミスト、セレナ・リン氏は「90日間の相互関税猶予期間中の交渉結果次第では、国内製造業の見通しは現時点で不透明である」と述べた。また、「仮に中国向け関税の一部が緩和されたとしても、企業が設備投資や採用を控えれば、成長の下振れリスクは依然として残る」と警戒感を示した。

DBS銀行の上級エコノミスト、チュア・ハンテン氏も、3月の工場活動に改善が見られたものの、「輸出主導型セクターの見通しは、特に年後半にかけて弱まる可能性が高い」と述べた。同氏は、「米国が中国を含む広範な貿易相手国に対して関税を引き上げることで、世界的に保護主義が強まれば、外需が減退し、シンガポールの製造業に悪影響を及ぼすだろう」と指摘した。また、「シンガポールの工場は、米国の関税政策に伴う不確実性の高まりに引き続き脆弱である」とも述べた。

分野別では、電子部門の生産高が前年同月比で8.9%増加した。このうち、情報通信・民生用電子機器分野が14.1%増、半導体分野が8.2%増、その他電子モジュール・部品分野が1.6%増となった。一方、コンピュータ周辺機器・データストレージ分野は2.9%減少した。

また、輸送機器部門も前年同月比で20.2%の大幅な増加となった。航空宇宙分野は、航空機部品の生産増加と航空会社向けの保守・修理・オーバーホール業務の増加により、30.9%拡大した。海洋・オフショア工学分野は8.1%増、陸上分野は5.4%増であった。

バイオ医薬品製造も前年同月比で17.2%増加した。このうち、医薬品分野は44.1%増と大きく伸びたが、医療機器分野は0.3%の小幅な増加にとどまった。

ただし、チュア氏は、3月に電子・バイオ医薬品製造分野が回復したものの、「米国による半導体および医薬品輸入への新たな関税措置が導入されれば、下振れリスクが高まる」と警告した。トランプ政権はこれらの関税措置を数か月以内に導入する可能性を検討しているという。

チュア氏は、「シンガポールは世界半導体サプライチェーンに深く統合されているため、米国の関税による半導体不況の影響を間接的に受ける恐れがある。また、米国による医薬品輸入関税は、シンガポールにとって他のASEAN6か国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)に比べてもリスクが大きい」と述べた。

一方で、他の部門では3月に生産高の減少がみられた。

精密工学部門は前年同月比で0.1%減少した。このうち、機械・システム分野は測定機器や後工程用半導体装置の生産増により0.3%増加したが、精密モジュール・部品分野は光学機器や金属精密部品の生産減少により1.7%減少した。

化学部門も6.0%減少し、すべての分野で減少がみられた。石油製品、特殊品、石油化学品分野がいずれも減少し、特殊品分野では産業用ガスや化学添加剤、バイオ燃料の生産が落ち込んだ。また、その他化学製品分野では香料の生産減が響いた。

一般製造業部門も13.0%減少した。印刷や食品・飲料・たばこ分野がそれぞれ落ち込み、飲料、乳製品、パン製品の生産が減少した。その他雑工業分野でも、構造用金属部品や木製家具、紙・板紙製コンテナ・箱類の生産減が影響した。

リン氏は、「3月の工業生産データは、シンガポールの製造業成長率見通しの下方修正を示唆している」と指摘した。第1四半期の速報GDP成長率(前年同期比3.8%)には製造業の5%成長が織り込まれていたが、「3月の結果を踏まえると、製造業成長率は前年同月比4%程度に下方修正され、第1四半期GDP成長率も約3.6%に引き下げられる可能性がある」と述べた。

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