「刃物のまち」岐阜県関市で受け継がれてきたモノづくりの精神と技術が詰まった包丁やハサミを民間ベースで輸出する動きが加速しており、12月17日にはシンガポールでも実演販売が行われた。
この取り組みは関市の食品商社・刃物商社㈲アールアンドエスフーズ(R&Sフーズ)が手掛けており、中国やモンゴルへの輸出経験をを活かし、東南アジアのゲートウェイであるシンガポールで販路を構築した。
もともと外食の頻度が高く、自炊の頻度が低いといわれていたシンガポールでは、パンデミック中に自炊や料理を始める人が増えたこともあり、キッチン用品に対する関心が高まっている。
こうした現地の状況を踏まえ、R&Sフーズの池村真一郎社長は家庭用包丁として一般的な三徳包丁や使い勝手のいいキッチンバサミを現地パートナーであるCARAMEL FOOD PRODUCTS PTE. LTD(以下、CARAMEL FOOD社)に提案。
今回輸出された商品は株式会社木村刃物製作所の濃州正恒作三徳包丁、出刃包丁、柳包丁、パン切包丁、キッチンバサミと、アナザークリエイト社横山浩充社長が考案した伝統美溢れる本格鎚目包丁に遊び心を加えたハート型の鎚目模様が特長の三徳包丁。
12月17日、18日の2日間はCARAMEL FOOD社が経営する飲食店で実演販売が行われ、興味ある来店客には複数の包丁で実際に野菜などを切ってもらい、握りやすさとシャープな切れ味を体感してもらった。濃州正恒作三徳包丁、パン切包丁、ハート型の鎚目模様の三徳包丁は事前告知の段階で予約注文もあり、ハイブリッドキッチンバサミも含め2日間での販売は上々だった。
今後の課題としては、現地で「関の刃物」の認知度を高めることと、飲食店向けに販路を拡大すること。池村社長は現地で開催される飲食店向けの見本市などへの出展が突破口となる可能性が高いのではないかと述べている。
高い品質とデザイン性に富む関の刃物輸出額は国内全体の約50%を占め、欧米や中東での需要が高まっている。また、関市はイギリスのシェフィールド、ドイツのゾーリンゲンと合わせて「刃物の3S」と呼ばれている。