熱帯気候でも育つイチゴを開発した地場系アグリテックSingrow社は、マレーシアとタイで合わせて56平方キロメートルにおよぶ農地を共同開発しイチゴなどを栽培することを発表した。これにより同社はイチゴの生産量を現在の100倍以上に増やすことができ、その一部をシンガポールへ独占的に出荷する予定だ。
Singrow社によると、同社が生産するイチゴは価格、品質、サイズにおいて、日本や韓国から輸入されている高級イチゴと遜色ないとし、世界各地の伝統的な農家で栽培されたものと同等の価格で、1年間にわたりシンガポールに安定供給することが可能となるという。
マレーシアとタイの農園で収穫されたイチゴがシンガポール市場向けに確保される割合についてはまだ検討中だが、Singrow社の最高経営責任者Bao Shengjie氏は、「この計画はシンガポール政府の食糧自立への野望に間違いなく貢献する」と述べている。
同社のチーフサイエンティストでもあるバオ博士は、 「シンガポールには国土のわずか1%しか農業用地がなく資源も限られているため、国内の農業関係者は食糧生産量を増やす新しい方法を検討する必要がある。Singrow社の技術は、今の時代にも適している」 と述べている。
4月11日に開業されたScience Park Drive内のSingrow研究開発(R&D)農場では、約300平方メートルの敷地で毎月約500kgの農産物の収穫を目指す。またR&D農場では、世界中で栽培される農産物の生産にも力を入れる予定だ。
Singrow社はブルーベリー、ブドウ、トウモロコシなども、イチゴと同様、熱帯の気温でも育つよう開発。また、干ばつに強い米の品種改良を行い、2カ月で収穫できるようにする。これら新しく開発された作物は、タイやマレーシアの新しいフランチャイズ農場でも栽培され、最終的にはシンガポール市場に出荷されるようになる。
R&D農場は、室内を移動してカメラで植物の健康状態を評価するロボットや、植物の成長サイクルのどの時点でも植物から放出される化学物質に基づいて植物の健康状態を監視できるセンサーなど、自動農業技術の試験施設としての役割も果たす予定だ。
R&D農場の設立記念式典の主賓として出席したアルビン・タン貿易産業相は、Singrow社のような農業技術企業の資金調達や事業拡大のニーズに対して、政府は今後も支援を続けていくと述べた。
シンガポール政府は2021年に、6000万ドルのアグリフード・クラスター変革基金を立ち上げ、小規模な農地での収量増加や生産能力の向上を目指すアグリテック企業への支援を開始した。
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