国際労働機関(ILO)がタイ、シンガポール、マレーシアで雇用者610人と外国人家事労働者(メイド)1,201人を対象に行った調査によると、これらメイドの収入が最低賃金を下回っていることが判明した。
同調査は2022年7月から9月に実施。メイドは明確なコミュニケーションが必要とされる仕事に従事しながら、その雇用条件も劣悪であった。
特にシンガポールでは、1日平均12.8時間、1週間81時間と、3カ国でメイドの労働時間が最も長く、他のセクターの国内基準である週44時間の労働時間のほぼ2倍だった。労働時間を考慮すると、彼女らの平均賃金月480米ドル(645シンガポールドル)は、出身国が定める最低賃金を下回っている。
マレーシアやタイのメイドに比べて、シンガポールのメイドは、賃金に占める渡航費用や手数料の割合も高く、給与の3カ月分以上に相当する。これら費用は、貯蓄、給与天引き、親戚や友人からの借り入れによって支払われている。
また強制労働の証拠(ILOでは、労働が非自発的であり、労働者が罰則の脅威にさらされていることを示す指標と定義されている)は、調査した3カ国すべてで見られた。このような指標には、仕事を辞めることができない、残業代なしで働かされる、などが含まれる。マレーシアでは、メイド全体の29%が強制労働を強いられており、シンガポール(7%)、タイ(4%)を大きく上回った。
シンガポールの人材開発省によると、2022年12月現在、シンガポールには268,500人のメイドが働いており、そのうちの86%が介護の必要な家庭に従事している。
6月16日に開催された調査報告会で、ILOのチーフテクニカルアドバイザーであるアンナ・エングブロム氏は、「家事労働は、私たちの社会で最も重要な仕事の一つでありながら、その従事者に対する保護は手薄で、受け入れられる状況ではない」と述べ、家事労働が正規の職業ではないとの認識に問題があると指摘した。
報告書も、「家事労働が職業とみなされない場合、労働移民制度は労働と社会的保護から切り離され、安全を保証することも家事と介護のニーズを満たす労働力を保証することもできないことを意味している」と指摘している。
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