インドネシア・ルピアが3月25日、対米ドルで0.5%下落し、1ドル=16,642ルピアとなった。これは1998年6月以来の最安値である。2025年に入ってからの下落率は3%を超え、新興国市場の中でも最も弱い通貨の一つとなっている。
シンガポール・ドルに対してもルピアは下落を続けており、今年に入って約6%の下落幅を記録した。3月25日午前11時46分時点で、1シンガポール・ドル=12,415.58ルピアとなり、前日比0.2%の下落となった。
インドネシア中央銀行(BI)は、外国為替市場(スポット市場)、国内ノンデリバラブル・フォワード(NDF)市場、国債市場に介入し、ルピアの安定を図っている。BIの金融管理・証券資産担当ディレクター、フィトラ・ジュスディマン氏は3月25日、「バランスの取れた外為市場の需給を確保し、国内市場への信頼を維持するため、大胆かつ慎重に介入している」と述べた。
ルピアの下落要因として、BIは世界的な不確実性を挙げる。その中には、ドナルド・トランプ氏による関税政策や、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め姿勢の強化が含まれる。特に、4月2日に予定されている米国の新たな関税発表が市場の不安を高めている。
国内要因としては、プラボウォ・スビアント大統領の経済政策が投資家の懸念を招いている。彼の政権は、インドネシアの長年にわたる経済政策の枠組みに変化を加え、軍の役割を民間社会へ拡大しようとしている。特に、2024年10月の就任以来、約300億米ドル(約4兆円)規模の「無償給食プログラム」などを推進しており、財政赤字が国内総生産(GDP)の法定上限である3%に迫る勢いとなっている。
シンガポール銀行(Bank of Singapore)のストラテジスト、モー・シオン・シム氏は、「財政への懸念は通貨の重しとなるだろう。また、外国人投資家による配当送金の時期とも重なり、ルピアにはさらなる圧力がかかる」と述べた。同氏は、BIがルピアの過度な変動を抑え続ける可能性が高いと指摘している。
ルピアの急落は、インドネシアの株式市場からの資金流出とも関連している。2025年に入ってから、海外投資家はインドネシア市場から20億米ドル以上を引き揚げている。国債市場でも、インドネシア国債は米国債に対して低調なパフォーマンスを示している。
3月25日正午時点で、インドネシアの主要株価指数「ジャカルタ総合指数(JCI)」は1%上昇していたが、依然として世界で最も低迷している株価指数の一つである。
来週の米国の関税発表を前に、市場関係者はさらなるルピアの下落を予想している。さらに、3月28日から4月7日まで続く長期の祝日を控え、慎重な姿勢が強まっている。
BNYメロンのAPAC市場担当ストラテジスト、ウィー・クーン・チョン氏は、「不安定な株式市場、財政赤字に対する懸念、そして長期休暇が重なることで、短期的なルピアの変動は一層激しくなる可能性がある」と述べ、「関税の影響を懸念する投資家は、休暇前に売却を決める可能性がある」と指摘している。
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