シンガポール金融管理局(MAS)は10月14日、金融政策を据え置き、シンガポールドルの実効為替レートの上昇ペースを維持すると発表した。中東情勢を背景とするエネルギー価格の高騰が続くなか、輸入物価の上昇が国内の幅広い商品・サービス価格に波及するリスクに警戒を示した。
MASは、主要貿易相手国の通貨に対するシンガポールドルの価値を管理する「名目実効為替レート(S$NEER)」を金融政策の主要な手段としている。今回の決定では、政策バンドの上昇ペース、変動幅、中心水準のいずれも変更しなかった。シンガポールドル高を通じて輸入コストの上昇を抑え、中期的な物価安定を図る。
MASによると、エネルギー関連商品の価格は9月以降、再び上昇し、当面は高水準で推移する見通しだ。食品価格についても、生産コストの上昇や悪天候の影響により、世界およびアジア地域で上昇圧力が強まる可能性がある。
住宅費と自家用車の個人輸送費を除いたコアインフレ率は、2026年第2四半期の前年同期比1.5%から、7~8月には2.1%に上昇した。MASは、輸入コストの上昇が国内価格に波及することで、今後数カ月はコアインフレ率と総合インフレ率がやや高めの水準で推移するとみている。
2026年通年のインフレ見通しについては、コアインフレ率を平均1.5~2.5%、総合インフレ率を約2%と予測した。2027年は両指標とも1.5~2.5%を見込む。世界のエネルギー価格が徐々に落ち着けば、インフレ圧力は2027年後半にかけて、より明確に緩和するとの見方を示した。
一方、シンガポール経済は、AI関連投資や半導体需要を背景に底堅く推移している。2026年第3四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比5.4%増となった。ただし、AI関連需要の勢いは2027年後半にかけて鈍化する可能性があるほか、借入コストの上昇や世界経済の不確実性も今後の成長を左右する要因となる。
MASは2026年に入り、4月と7月に金融政策を引き締めている。今回の据え置きは、これまでの措置による物価抑制効果を維持しつつ、エネルギー価格や輸入コストの動向を見極める姿勢を示したものといえる。今後は、シンガポールドル高によるインフレ抑制効果と、外部環境の変化が国内物価および経済成長に与える影響が焦点となる。
※ソース


