【シンガポール】家賃高騰、小規模店の閉店ラッシュ相次ぐ

シンガポール

シンガポールで小規模事業者が家賃の高騰に直面している。パン屋やケーキ店、フィットネスジムなどが相次いで閉店を余儀なくされ、経営継続が困難になるケースが増えている。事業者からは「賃料が経営を圧迫している」との声が相次ぎ、政府による支援を求める動きも出ている。

センバワン・ロード近くの複合施設「The Brooks」に店を構えるフランス菓子店「Nicher」は、6月末で契約が終了するのを機に閉店を決めた。元マリーナ・ベイ・サンズのペストリーシェフであるオーナーのメルビン・コー氏(39)は、更新後の家賃が現行の月額5,000ドルから15%増となる見込みで、「このままでは採算が取れない」と述べた。彼の事業では賃料が全体の経費の半分を占めており、原材料や人件費の上昇も経営を圧迫している。

同様の悩みは他の事業者にも広がっている。イーストコーストのSiglap Driveにあるケーキ店「Flor Patisserie」のオーナー、ハイジ・タン氏は、家賃が月額5,400ドルから8,500ドルへと57%引き上げられることを受け、7月初旬に退去する予定だと明かした。タン氏は5月7日にInstagramで「家賃は小規模事業者を殺す要因の一つ」と投稿し、政府による支援の必要性を訴えた。

カラン・ウェーブ・モールのジム「Neue Fit」を共同経営するグレース・ファン氏(42)も、家賃高騰に悩まされている。彼女は2018年の開業以来、賃料が約57%増加し、現在では月額2万ドル以上を支払っている。賃料は全体の経費の約3割を占め、「このお金は本来、プログラム拡充やスタッフ支援、顧客体験の向上に使いたい資源だ」と語った。

不動産市場の専門家によれば、家賃の高騰にはいくつかの背景がある。サヴィルズ・シンガポールの小売部門ディレクター、スリアン・タン=ウィジャヤ氏は、多くの商業施設が不動産投資信託(REITs)によって所有されており、賃料引き下げの余地が乏しいと指摘した。中心部や郊外の主要モールでは依然として空室率が低く、退店があっても新たな入居希望者がすぐに現れる状況にある。

ナイトフランク・リサーチによると、2025年第1四半期時点で、中心部の主要商業施設では賃料がパンデミック後に11.8%上昇し、郊外でも5.8%の上昇が見られるという。一方で、2020〜21年のパンデミック期には、中心部で20.2%、郊外で8.7%の下落があった。

小規模事業者の支援を求める声は強まっている。フィットネスやウェルネス分野など、公益性の高い業種への賃料補助や、特定地域でのF&B業態の過剰進出を防ぐための供給管理、急速に拡大するチェーンへの追加課税などが提案されている。

600以上の事業者が参加する団体「SGTUFF(Singapore Tenants United For Fairness)」は、無規制の賃料上昇がインフレ圧力となり、最終的には消費者価格の上昇にもつながると警鐘を鳴らしている。団体は物件規模や立地に応じた段階的な賃料上限制度や、安定的な長期契約を提供する家主へのインセンティブ導入を提案している。

ブランド戦略家のデビー・ヨン氏は、文化的・起業家的な価値を持つ地区での家賃安定化政策の試験導入を提案した上で、「商業賃料の高騰は、F&Bや小売の分野における創造性と革新性を奪っている」と指摘した。「その結果、多様性に乏しい消費環境となり、国内需要も冷え込み、経済の好循環が損なわれている」と述べている。

※ソース

Singapore businesses call out 'unsustainable rent hikes'
Businesses appeal for support and measures to tackle rent hikes Read more at straitstimes.com. Read more at straitstimes.com.
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