シンガポールの製造業が景気後退局面に入った。4月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.6となり、19カ月ぶりに節目の50を下回った。米国による高関税の影響で輸出注文の延期やキャンセルが相次いだことが主因だ。
SIPMM(シンガポール購買資材管理協会)によると、電子部門のPMIも49.8に落ち込み、17カ月ぶりに縮小に転じた。電子部門は製造業全体の約4割を占めており、影響は広範囲に及ぶ。新規受注、生産、雇用のいずれもが縮小し、将来の業況見通しも悪化した。
背景には、米国のトランプ大統領が4月に発表した一連の関税政策がある。全輸入品に10%の基礎関税を課したほか、中国に対しては145%という過去最大の関税を課している。鉄鋼や自動車などには既存の25%関税が継続され、医薬品や半導体への拡大も示唆された。
DBS銀行のエコノミストは「今回の下落幅はコロナ禍初期以来の大きさ」と指摘。経済開発庁(EDB)や金融管理局(MAS)も製造業の先行きに懸念を示している。MASは2025年1〜3月期の工業生産が前年比4%に減速したと報告。貿易産業省(MTI)もGDP成長見通しを下方修正し、2025年の成長率は0〜2%になる見込みだ。
世界でも米国の関税強化による影響が広がっており、アジア各国の製造業PMIも軒並み低下している。シンガポール経済は今後も外的リスクへの脆弱性を抱え続ける見通しだ。
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