マレーシア政府は、停滞しているクアラルンプール-シンガポール高速鉄道(HSR)計画について、数週間以内に今後の方向性を内閣で協議する予定である。しかし、約1,000億リンギット(約3,050億円)に上る建設費用の調達が最大の課題となっている。政府は資金を全て民間から調達する方針だが、業界内ではプロジェクトの採算性を巡る懸念が高まっている。
アヌワル・イブラヒム首相は、プロジェクトの復活に前向きな姿勢を示しているが、現政権は1.24兆リンギットを超える国債削減を最優先しており、政府予算を投入する考えはない。2024年には中国政府に非公式に資金提供を打診したが、採算性の懸念から前進はなかったとされる。業界関係者によれば、中国国内でも収益性が高い高速鉄道路線は北京-上海間と広州-深圳間に限られており、それ以外は政府補助を必要としている状況である。
マレーシアのアンソニー・ローク運輸相は、2025年1月初旬に協議される政策文書について「プロジェクトの復活を最終的に決定するものではなく、今後の方向性を議論するためのものである」と述べた。また、プロジェクトの実現にはシンガポールとの協議が必要であると強調した。
HSRプロジェクトは2013年に提案され、2016年には運行開始を2026年に目指す法的拘束力のある協定が締結された。しかし、2018年にパカタン・ハラパン連合が政権を握ると、当時のマハティール・モハマド首相により一度中止され、後に一時的に棚上げとなった。その後、2021年1月に両国の協議が決裂し、プロジェクトは正式に終了。マレーシアはシンガポールに補償金を支払った経緯がある。
現在、プロジェクトの復活に向けた具体案を検討するため、マレーシアは3つのコンソーシアムを選定している。しかし、主要メンバーの一つであるマレーシアリソースコープ(MRCB)が突如コンソーシアムを離脱し、プロジェクトから撤退する決定を下した。この動きは業界関係者に大きな衝撃を与えた。
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