東南アジアのデジタル経済は、人工知能(AI)技術の急速な普及を背景に、2025年末までに取扱総額(GMV)が3,000億米ドル(約3,900億シンガポールドル)を突破する見通しだ。これはBain & Company、テマセク、Googleが11月11日に発表した年次報告書で明らかになったもの。
報告書によると、2025年6月時点のGMVは2,990億米ドルに達しており、対象国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムに加え、今年からブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーを含む10カ国に拡大した。これにより、同地域のデジタル経済規模は10年前の初回報告書で示された予測(2,000億米ドル)を上回った。
報告書は、AIが東南アジア経済の変革を加速させると指摘。中でもシンガポールは地域のAIハブとして存在感を高めている。東南アジア全体で約680社あるAI関連スタートアップのうち、495社が同国に拠点を置いており、これまでに23億米ドル超の投資が行われている。
テマセク東南アジア統括責任者フォック・ワイホン氏は、「AIは無視できない世界的な投資テーマだ」と述べ、慎重ながらもAI関連投資を拡大していく方針を示した。2024年にはデジタル分野の資金調達全体のうち、AI関連が3割以上を占めたという。
Bain & Companyのフロリアン・ホッペ氏は、「シンガポールのAI分野での先行投資は、東南アジア全体の持続的な経済価値の創出につながる」と強調した。
報告書によると、プライベートファンディングは前年比15%増の77億米ドルに達し、投資活動は回復基調にある。投資の中心は、レイトステージ企業やデジタル金融サービス、AI・ディープテック分野となっている。資金流入が特に期待される国は、シンガポール、ベトナム、マレーシアの3カ国だ。
フォック氏は、「テマセクはこれまで初期段階の企業育成を重視してきたが、今後は成長段階企業への投資を強化し、社会的価値と持続的な収益の両立を目指す」と述べた。
東南アジアの主要デジタル分野はいずれも好調に推移している。Eコマースでは市場再編が進み、大手企業による寡占化が進行。動画コマースでは「ショッパーテインメント(shoppertainment)」が主流化しており、オンラインショッピングがエンターテインメント化している。
フードデリバリーは前年比14%増で日常的なサービスとして定着。配車サービスも16%増と堅調で、今後3〜5年で自動運転車の導入が進む見通しだ。旅行・宿泊分野も航空運賃とホテル料金の上昇を背景に高成長を維持している。
Google南・東南アジア担当副社長サプナ・チャダ氏は、「東南アジアは数年単位ではなく、数カ月単位で成果を出すスピードで進化している」と述べ、「AIと持続的な利益成長が次の時代を形づくる」と語った。
フォック氏は、「シンガポールはAI革新とガバナンスの両面で地域をリードしている。資本市場の整備と地域連携の強化が、東南アジア全体のAI成長を支える鍵となる」と述べた。
同報告書は、シンガポールが引き続き東南アジアのデジタル経済の中核として、AI時代の持続的成長を支える中心的な役割を果たしていくと結んでいる。
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