シンガポールビジネス連盟(SBF)が5月28日に発表した最新の全国ビジネス調査(NBS)によると、経済の不確実性が高まる中、企業の悲観的な見通しが広がっている。2025年第1四半期には、今後1年で経済が悪化すると答えた企業が40%に達し、2024年第4四半期の22%からほぼ倍増した。
この傾向は企業規模を問わず共通しており、中小企業では23%から41%に、大企業でも18%から38%に増加している。調査は主要産業に属する526社を対象に実施された。
業種別では、「ホテル・飲食・宿泊業」「医療・福祉」「小売業」で特に悲観的な見方が強かった。なかでも「ホテル・飲食・宿泊業」は新たに導入された「ビジネス・センチメント指数(BSI)」で52.2と最も低く、全業種平均の56.5を下回った。同業種は、売上、利益、事業拡大、設備投資、ビジネス成長の見通しすべてにおいて最低水準であった。
一方で、いくつかの業種では明るい兆しも見られる。「銀行・保険業」と「教育分野」は比較的楽観的な見方をしており、それぞれBSI 61.2と60.5を記録した。これらの業種では売上や利益の期待値も高く、教育分野は利益期待で60.8、不動産が60.4、銀行・保険が59.1であった。
事業拡大の見通しは全体でBSI 61.6と中程度の楽観を示し、特に教育(66.6)と銀行・保険(65.6)が高い水準を記録した。雇用の見通しではBSI 57.7となり、企業の多くが現状の人員を維持する方針を示している。「ホテル・飲食・宿泊業」「IT関連サービス」「教育」は雇用に最も前向きであった。
政府による2025年度予算案では、以下の5つの施策が企業にとって有益と評価されている:法人税50%還付、段階的賃上げ支援スキームの強化、CPF移行支援、高齢者雇用助成の延長、新設の「スキルズフューチャー人材育成助成金」である。
また、企業は依然として長期的な競争力確保に向け、業務改革と人材育成に積極的である。SBFのコク・ピン・スン最高経営責任者(CEO)は「政府の支援策を活用し、変革を継続することが重要だ」と述べている。
業務改革の優先事項としては「海外展開」と「AI技術の導入」が挙げられた。人材育成においては「スキルズフューチャー企業向けクレジット制度」と「人材育成助成金」が特に支持されている。
一方で、資金繰りに関する懸念も浮上している。約4分の1の企業が中度から重度の信用逼迫に直面しており、そのうち35%が「今後3〜6カ月の運転資金が不足している」と回答した。
企業は、政府による資金調達支援の強化、返済条件の柔軟化、代替的な金融手段へのアクセス向上を求めている。コク氏は「資金調達のしやすさとコストが依然として大きな課題だ。政府や金融機関と連携し、企業支援をさらに強化していきたい」と述べた。米国による新たな関税措置の影響で、より大きな資金枠と長期的な融資条件が必要となる企業も増えているという。
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