人材紹介会社ランドスタッドが実施した国際調査によると、シンガポールの労働者にとって最も重要な就労条件は「ワークライフバランス」であることが分かった。給与や福利厚生、雇用の安定、昇進の機会よりも優先順位が高いという結果である。
この年次調査は、日本、ベルギー、インド、ギリシャなどを含む約17万人を対象に行われたもので、シンガポールでは2,522人が回答した。調査では、現在の雇用主に対し「ワークライフバランス」と「給与・福利厚生」の両方を肯定的に評価した労働者は、いずれもわずか5割強にとどまった。これは、どちらの要素も労働者にとって優先度が高い一方で、満足度はそれほど高くないことを示している。
ランドスタッド・シンガポールのマネージングディレクター、デビッド・ブラスコ氏は「現在では給与や福利厚生が非常に競争的であるため、ワークライフバランスが優秀な人材を引きつけ、定着させる決め手になっている」と述べた。
世代別に見ると、Z世代(13〜28歳)とミレニアル世代(29〜44歳)は「ワークライフバランス」と「給与・福利厚生」を最優先事項としている。一方、X世代(45〜60歳)は報酬面への関心がやや高い傾向にある。
また、Z世代では「公平で多様性のある職場環境(エクイティ)」への関心も高く、職場で自分の特性が評価されていると感じるかどうかが重要な要素となっている。しかし2025年の調査では、「自分の特性が職場で評価されている」と答えた人は53%にとどまり、前年より4ポイント減少した。この結果は、採用や昇進などの場面で、公平さや透明性が十分に確保されていないと感じる労働者が増えていることを示している。
さらに、Z世代は「研修やスキル開発の機会」を重視する一方、X世代は「経営が安定している企業」であることを求める傾向がある。年齢が上がるにつれて、職場の雰囲気や快適さに対してより批判的な目を持つ傾向も明らかになった。
ブラスコ氏は「目標達成や締め切りに追われる中で、従業員の体験が後回しにされがちである。しかし、自由に意見を言える雰囲気や、新しいスキルを学べる機会、同僚との交流など、日常のささいな経験こそが職場への愛着を育み、離職の防止にもつながる」と語った。
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