シンガポールでは、後継者のいない中小企業(SME)に対し、事業の継続と成長を支援する新たな仕組みが登場した。企業買収と長期運営を目的とする投資会社「ティマ・パートナーズ(Timah Partners)」が、次世代の経営者を育てる「CEO継承プログラム(CSP)」を開始した。
このプログラムでは、特にサービス業の中小企業を対象に、創業者が自社を売却する際、単なる買収にとどまらず、将来の経営者候補の育成も支援する。つまり、企業の「後継者不在」という大きな課題に正面から取り組む構えだ。
シンガポールでは、サービス業がGDPの7割以上を占めるが、多くの企業が後継者不足に悩んでおり、事業の持続的な成長を妨げる要因となっている。ティマ・パートナーズの創業者でCEOのデニス・チュア氏は、「特に創業世代の経営者の多くが引退を控えている中、家族内に後継者がいないケースが目立つ」と指摘する。
実際、PwCが2021年に行った調査では、シンガポールのファミリービジネス経営者80人のうち、正式な後継計画を策定していたのはわずか4分の1だったという。
チュア氏は、「現在、中小企業が抱える最大の課題は資金ではなく“人材”だ。CSPはこの問題を解決するために設計された」と語る。プログラムでは、造園、害虫駆除、廃棄物処理など、一般的には人気が高いとは言えない分野の企業でも活躍できる経営人材を育成し、将来的には多様なバックグラウンドを持つ人材の採用も視野に入れるという。
ティマ・パートナーズは、企業価値が1,000万〜5,000万ドル、営業利益が200万〜1,000万ドル規模の中小企業を買収対象とし、株式公開や短期的な売却は目指さず、長期的な成長と安定運営を重視している。チュア氏は、同社のモデルは米国の著名投資会社バークシャー・ハサウェイにあると説明する。
「多くの経営者が、自社を売却した後に新オーナーが経営を混乱させ、顧客離れや法的トラブルが起きることを心配している」とチュア氏は述べる。「CSPでは、そうした不安を取り除き、事業の“遺産”を守りながら次の世代に引き継ぐ体制を整えることができる」
また、同社の戦略はコスト削減を目的とするものではなく、プログラムから輩出された新CEOが企業運営の意思決定を担う。チュア氏は、「短期的な利益に走るのではなく、長期的な視点での経営を重視する価値観を学んでほしい」と語る。
このプログラムの開始に先立ち、ティマ・パートナーズは2025年6月、米国の投資会社創業者らから5,000万米ドル(約6,440万シンガポールドル)の出資を受けた。同社は今後の追加資金調達は予定しておらず、まずは最初の買収を完了させ、その後のキャッシュフローで次の案件を進めていく方針だ。
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