出生率の低下と急速な高齢化が進むシンガポールで、政府は移民の受け入れ拡大を通じて人口と労働力を補う方針を示している。一方で、新規住民の社会統合をいかに進めるかが重要な政策課題となっている。
ガン・キムヨン副首相によると、2025年の合計特殊出生率は過去最低の0.87に落ち込み、このままでは2040年代初頭に国民人口が減少に転じる可能性がある。政府は子育て支援を「最優先課題」とする一方、出生率低下を補うため、今後5年間は年間2万5000人から3万人の新規市民権を付与する見通しだ。永住権(PR)も年間約4万人に増やす計画で、移民政策を慎重に管理しながら人口構造の維持を図る。
移民受け入れは経済維持や労働力確保の観点で不可欠とされるが、雇用競争や公共インフラへの負担増を懸念する声も根強い。2011年の総選挙では移民増加への不満が政治的争点となるなど、社会的な緊張も生じてきた。
こうした背景から政府は、移民の社会統合を重視している。新たな永住権取得者向けプログラムでは、シンガポールの文化や生活習慣を学ぶオンライン講座や地域活動への参加を通じて理解を深める取り組みを進めている。2026年には外国人専門職向けのオリエンテーション制度も導入する予定だ。
新規市民の多くは東南アジア出身で、2024年には全体の約64%を占めた。専門家は、文化的背景が近い地域からの移民は社会に溶け込みやすいと指摘する。
政府や地域団体はコミュニティ活動やボランティアを通じた交流を促進しているが、専門家は学校や職場など日常の接点での関係づくりが統合の鍵になるとみる。
人口減少への対応として移民の役割は今後さらに大きくなる見通しだが、社会の結束を維持するためには、市民と新規住民双方の理解と適応が不可欠だと指摘されている。
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