2025年1~3月期のシンガポールにおける求人件数は増加したものの、製造業では人材需要の減速が見られた。
労働省(MOM)が6月27日に発表した労働市場報告書によると、3月時点の求人件数は81,100件で、2024年12月の77,500件から増加した。一方、製造業の求人は8,200件から8,000件に微減しており、雇用動向に陰りが見える。
ただし、これらのデータには、ドナルド・トランプ米大統領が4月2日に発表した新関税(いわゆる「解放の日」関税)の影響はまだ反映されていない。
こうした政策発表を受けて、MOMは4~5月にかけて全業種8,000社以上を対象に意識調査を実施。企業に「次の四半期(4〜6月期)に採用予定があるか」を尋ねたところ、採用意向のある企業の割合は42.2%だった。これは、1〜3月期に実施された前回調査の結果(40.5%)からやや上昇している。
MOM人材統計部のアン・ブーンヘン部長は「企業は引き続き慎重な人員計画を取っており、採用・解雇ともに抑制的な姿勢を保っている」と指摘。求人の増加も全体的な傾向ではなく、主に専門サービス業や金融サービス業など一部業種に限定されていると述べた。
給与引き上げを予定する企業の割合は安定しており、2025年第3四半期には21.2%の企業が賃上げを予定している。
また、同報告書によれば、2024年10~12月期に3,680件だった解雇数は、2025年1~3月期には3,590件にわずかに減少した。卸売業や地域・社会サービス分野で減少が見られた一方、製造業、建設業、運輸・倉庫業では増加している。
製造業では短時間勤務へ移行する従業員も増加傾向にあり、特に電子・コンピュータ・光学機器の製造分野では、短時間勤務者が2024年末の50人から2025年初頭には180人に急増した。
DBS銀行の上級エコノミスト、チュア・ハンテン氏は「米中関税交渉の不透明感が続く中、2025年後半には製造業の成長が鈍化する可能性がある」と指摘。「上半期に前倒しで発生した輸出受注は、下半期に貿易や工業生産の減速という形で反動が現れるだろう」と分析した。
MOMによると、労働市場は依然として逼迫しており、1人の失業者に対して1.64件の求人がある状態が続いている。
シンガポール国民および永住者によって充当される可能性が高い求人は、2024年12月の53,800件から2025年3月には59,400件に増加し、全体の約7割を占めた。1~3月期の住民雇用(シンガポール人および永住者)は300人増加したが、前年第4四半期(1,400人増)と比べると伸びは鈍化している。
一方、Sパスおよびエンプロイメント・パス(EP)保持者など非居住者の雇用は2,000人増加。主にバスやトラックの運転手など、地元住民があまり選ばない職種での雇用が中心だった。
全体として、2025年第1四半期の雇用増加ペースは、2024年第4四半期に比べて大きく減速している。
※ソース