【タイ】サプライチェーン強化へ 日本企業の投資関心高まる

タイ

タイは、サプライチェーンの強靭化と米国の貿易摩擦によるリスク軽減を目的に、日本企業との経済連携を強化している。タイ投資委員会(BOI)が2月に実施した日本への投資誘致ミッションでは、多くの日本企業がタイへの関心を示した。自動車、半導体、食品・包装分野を中心に、具体的な投資計画が進んでおり、政府間協力の枠組みも強化される見通しだ。

BOIのナリット・テルステーラスクディ事務局長によると、2月19日から21日にかけて日本を訪問し、日本企業と面談した結果、多くの企業がタイを生産拠点として有望視していることが分かった。特に、自動車や半導体業界では、中国への依存を減らし、サプライチェーンの分散を進める動きが加速している。

2025年タイ・日本投資フォーラムには、自動車、電子機器、機械、石油化学、プラスチック、加工食品、金融サービス、デジタルビジネス、貿易、物流などの業界から多くの企業が参加し、タイの投資環境について議論が行われた。

自動車、半導体、食品・包装分野での具体的な投資の動きとして、以下の企業が関心を示している。

・半導体:東芝、ミネベアミツミ、Rapidusとの会談では、タイでの半導体後工程の組み立て・試験(特にパワーエ
レクトロニクス分野)の可能性が話し合われた。また、BOIはLeading-edge Semiconductor Technology Centre
(LSTC)と人材育成について協議した。
・自動車:いすゞは今年、バッテリー式電気自動車(BEV)のピックアップトラックをノルウェー向けに生産する計
画で、バッテリー交換式商用車や合成燃料(e-fuel)車の開発にも取り組んでいる。三菱自動車は新型ハイブリッ
ド車(HEV)の投入を予定し、2025年末には小型BEV商用車の生産を開始する。
・食品・包装:サントリーグループはタイでの飲料・健康食品の生産拡大に関心を持ち、BOIは研究開発(R&D)の
奨励策を提示した。また、サントリーの2030年環境目標に沿った環境配慮型の包装についても議論が行われた。

またBOIは、日本の経済産業省(METI)および日本貿易振興機構(JETRO)と協議を行い、政府間の連携を強化することで合意した。特に、自動車やサプライチェーンの発展、新エネルギー(持続可能な航空燃料(SAF)、バイオ燃料、水素)、中小企業(SME)・スタートアップの支援、日本企業の投資促進に焦点を当てる。

ナリット事務局長は、日本の武藤経済産業副大臣との会談について「両政府が緊密に連携し、日本企業の投資を支援する姿勢を明確に示すことで、タイの競争力のある技術革新環境に対する投資家の信頼が高まった」と述べた。

BOIは、タイの投資環境の魅力として、次の4つの要素を強調した。
・人材育成:教育やスキル研修への投資
・インフラ整備:交通網、デジタル基盤、水資源管理、エネルギーシステムの開発
・イノベーション促進:各産業の技術革新の推進
・政府の支援:投資を後押しする政策・規制の整備とビジネス環境の向上

また、BOIは高付加価値産業や農業分野の振興にも力を入れ、タイを市場、製造拠点、研究開発ハブ、サプライチェーンの要とする方針を示した。特に、以下の5分野を今後の重点領域と位置づけている。

・バイオ・循環型・グリーン経済(BCG)
・電気自動車(EV)
・半導体・電子機器
・デジタル技術
・国際ビジネスセンター(IBC)

今回の日本訪問を通じて、タイは日本企業の投資意欲を引き出し、サプライチェーンの多角化に向けた協力関係を強化することに成功した。特に、自動車・半導体・食品といった分野での投資が進めば、タイの産業競争力向上に寄与するとみられる。今後、タイ政府は投資インセンティブの強化や規制緩和を進め、さらなる企業誘致を目指す方針だ。

※ソース

Japanese Firms Eye Thailand as Production Hub Amidst China Concerns
Strong infrastructure, skilled workforce, and government support lure companies seeking regional production hub
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