マレーシア南部ジョホール州のメルシンで観光ブームが続いており、“隠れた楽園”として注目を集めている。しかし、急増する来訪者が自然環境に負荷をかけているとの指摘が強まっている。
メルシン川河口からスピードボートで約20分。無人島プラウ・スリブアの丘に登ると、周囲の島々や砂洲、サンゴ礁を見渡す絶景が広がる。この景観がSNSなどを通じて話題となり、パンデミック後に観光熱が一気に高まった。
かつてメルシンはティオマン島の玄関口にすぎなかったが、現在はメルシン自体が目的地となっている。地区には97の島と岩礁が点在し、日帰りの島巡りから本土宿泊まで多様な需要が生まれている。2023年の来訪者数は約70万人、2025年は8月時点で36万人を超え、ジョホール州は2030年に年間200万人を目標としている。
一方で、観光急増の影響がサンゴ礁に表れ始めている。リーフチェック・マレーシアによる2024年調査では、サンゴ被覆率が約50%と“かろうじて健康”の水準に低下し、パンデミック直後の約60%から後退した。2024年の白化現象に加え、観光圧力や沿岸開発、汚染が複合的に影響しているとされる。
こうした状況を受け、メルシン地区事務所は2025年9月18日に6島の閉鎖を発表し、海洋生態系の回復作業を開始した。ジョホール州スルタン・イブラヒム陛下も保全強化を呼び掛けている。閉鎖対象はプラウ・ハリマウ、プラウ・メンシリップなどで、いずれも人気の島である。
行政は「定期的な保全措置」と説明するが、観光事業者には直ちに影響が出ている。航路短縮によりボート助手の収入は減少し、モンスーン期による休業も重なり経済的打撃が広がっている。
ツアー会社もパッケージの再編を余儀なくされ、ハリマウ島を含む商品は販売停止となった。周辺の島が長期閉鎖されていた影響で、一部の観光地に人が集中する事態も生じている。
メルシンでは観光需要の高まりを受け、ボート事業者が急増している。登録数は2023年の200社から2025年には355社に増加した。州が進める「ビジット・ジョホール 2026」キャンペーンを前に、国内外のメディア誘致も進み、さらなる需要拡大が予測される。
2024年には観光データを管理する「メルシン・ツーリズム・オペレーティング・システム(Metos)」を導入し、来訪者動向の把握を進めている。しかし、観光業者への配慮から入島規制には踏み込めておらず、島々は引き続き過剰利用のリスクに晒されている。
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