シンガポールでは、50億米ドル(約64億シンガポールドル)を超える大型M&A(合併・買収)案件が減少している。投資家や企業はより小規模ながらも価値創出に重点を置いた取引にシフトしている。
2025年に成立した唯一のメガディールは、7月に行われたテマセクによるインド合弁事業の持ち分をシュナイダー・エレクトリックに売却した案件(81.8億ドル)だった。米投資会社KKRによるST Telemedia Global Data Centresの買収(64億ドル)は成立目前だが、GrabとインドネシアのGoToの合併計画は規制や反発で停滞している。
一方で、2025年上半期のシンガポール関連M&A総額は352億ドルと前年同期比3.2%増加した。10億〜30億ドル規模の案件は9件(計149億ドル)に達し、前年同期の5件から増加した。台湾のモリソン・エクスプレス買収(9億ドル)や、カザフスタン金鉱山の買収(12億ドル)などが代表例である。
専門家は、今後もデジタルインフラ、銀行、再生可能エネルギー分野を中心に同規模の案件が増えると予測する。M&Aの活発化は市場の深化、外国投資の誘致、高付加価値雇用の創出につながる。
注目分野の一つはヘルスケアで、高齢化需要を背景に統合が進む。米TPGによるエコン・ヘルスケアの買収(約8,800万ドル)は現在、競争・消費者委員会の審査中だ。シンガポール拠点の医療グループは、周辺国の医療保険事務代行会社(TPA)の買収にも関心を示している。
日本企業の動きも目立つ。三菱商事は8月、フラートン・ヘルスに出資。第一生命も域内でのM&Aを模索しており、2024年には住友生命がシングライフを46億ドルで買収した。
データセンターを中心とするデジタルインフラも「ホットアセット」とされる。ケッペルDCリートは欧州・日本・韓国での取得を検討中で、日本のNTTは7月に7億7,300万ドル規模のデータセンターリートをシンガポール証取に上場させた。
今後は、シンガポール企業による海外インフラや再エネ資産の取得も活発化する見通しだ。テマセクやGICなど政府系ファンドも積極的に関与するとみられる。実際、テマセク傘下の65 Equity Partnersは3月、スイス製薬会社の買収を支援し、企業価値は約3億8,000万ドルに達した。
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