【シンガポール】塩・調味料・即席麺にも栄養分表示義務化へ

シンガポール
The Government hopes the labelling initiative can help to curb excessive intake of sodium and saturated fat. ST PHOTO: SHINTARO TAY

シンガポール政府は、ナトリウムや飽和脂肪酸の摂取過多を抑制するため、2027年半ばから塩や調味料、即席麺などの加工食品に「Nutri-Grade(ニュートリグレード)」ラベルの表示を義務化する。これは、国民の健康意識を高め、慢性疾患の予防につなげる狙いがある。

新たに導入される表示義務の対象は、塩、ソース、調味料、即席麺、調理油などである。これらは23の製品サブカテゴリーに分類され、それぞれにA〜Dの評価基準が設けられる。D評価となった製品は、最も健康に悪い選択肢とされ、広告が一切禁止される。また、商品のラベルには最終評価に影響した成分が明示される。たとえば、即席麺がナトリウムではCでも、飽和脂肪酸がDであれば、製品全体としてはD評価となり、飽和脂肪酸の高さがラベルに記載される。

この制度の背景には、シンガポール国民の食生活におけるナトリウムと飽和脂肪酸の過剰摂取がある。2022年の国家栄養調査によると、国民の約9割が1日平均3,620mgのナトリウムを摂取しており、世界保健機関の推奨基準(2,000mg)を大きく上回っている。脂肪摂取のうち飽和脂肪酸の割合も36%にのぼり、推奨上限の30%を超えている。

このような食習慣は、高血圧(有病率37%)や高コレステロール(31.9%)といった慢性疾患の一因とされており、政府は新制度によって消費者の選択をより健康的な製品へと誘導する方針である。実際、すでに市販されている塩や調味料、即席麺などのうち、約4割がD評価に相当するという。

Nutri-Gradeラベルは、2020年12月に清涼飲料などを対象に導入されており、導入以降、商品の糖分含有量が大幅に低下するなどの成果が見られた。たとえば、飲料の平均糖分は2017年の7.1%から2023年には4.6%にまで下がっている。政府は今回の制度拡大によって、塩分や脂肪分についても同様の改善効果を期待している。

保健省(MOH)と保健促進庁(HPB)は、制度設計にあたり7,000人以上の業界関係者や専門家、一般市民から意見を集めた。各製品カテゴリに個別基準を設けた理由について、HPBの担当者は「一律の基準では、すべての製品がD評価となってしまう可能性がある。それでは食品文化の多様性が損なわれ、食のハブとしての国際的評価にも影響を与えかねない」と説明している。

メーカーに対しては、製品の改良を促すための助成金「Healthier Ingredient Development Scheme」やガイドラインの提供など、支援策も用意されている。これにより、業界が段階的に製品の健康化を進めることができるよう配慮されている。

オン・イェクン保健相は、「健康は高価なものではない。毎日の習慣、調理法、食材選びの積み重ねが大切だ。はじめは味が変わったと感じるかもしれないが、やがて素材の味を楽しめるようになる」と述べ、制度の意義を強調した。

※ソース

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