【タイ】日本食業界、中国チェーンの台頭で競争激化

シンガポール

タイの日本食業界は、中国系レストランチェーンの急速な拡大と低価格戦略により競争が激化している。日本食レストランは市場シェアを維持するため、ブランド力の強化やコスト管理など迅速な対応を迫られている。

カシコンリサーチセンターの報告によると、タイの外食産業は2024年に総額5,450億バーツ(前年比8.9%増)に達し、そのうちフルサービス型のレストラン(日本食レストランを含む)は2,070億バーツ(6.9%増)を占めた。2025年には市場全体が5,720億バーツ(4.8%増)、フルサービス型のレストランは2,130億バーツ(2.9%増)に成長すると予測されている。

この成長の一方で、競争も激しさを増している。特に中国系レストランの進出が目立ち、低価格戦略と迅速な展開により日本食レストランとの競争が加速している。JETROバンコクは、日本食業界は今後ますます厳しい競争環境に置かれ、「ブランド力の確立と消費者ニーズへの対応が生き残りの鍵になる」と指摘。

市場の変化を受け、日本食レストランは価格競争だけでなく、メニューの価値向上にも注力している。しかし、日本食レストラン全体の数は増加しているものの、寿司レストランは過当競争の影響で6.8%減少した。一方、手頃な価格で高品質なラーメンや寿司が人気を集めており、特に日本への旅行経験を持つタイ人の間で本格的な日本食の需要が高まっている。

競争に打ち勝つため、日本食レストランは食材の品質向上、顧客体験の強化、コスト管理を重視している。具体的には、高級食材の調達、輸入コスト削減のためのまとめ買い、本格的な日本の雰囲気を演出する店作りなどが挙げられる。また、マーケティング戦略の見直しやオンライン活用、付加価値の創出も重要な課題となっている。

一方、中国系レストランの成長ペースは鈍化している。かつて急増した回転寿司チェーンの多くが閉店し、資本力と好立地を持つ「海底撈(ハイディラオ)」や「CQK」などの大手ブランドのみが市場に残っている。ワルントーン・ダンヤイNigiwai Group共同創業者兼取締役は、「中国系レストランのブームはピークを過ぎた。また、タイ政府による違法な中国資本への取り締まりが影響し、中国企業の拡大が鈍化している」と分析する。

日本食業界のトレンドも変化している。かつて人気を誇ったおまかせスタイルの寿司店は減少傾向にあり、ブランド力のある店舗のみが生き残っている。一方、手巻き寿司は成長分野として注目されており、運営コストが低く職人に依存しないため、価格を抑えやすい点が魅力だ。しかし、タイの外食市場は「レッドオーシャン」と化しており、大手チェーンが優位に立つ中、小規模な独立系日本食レストランの経営は厳しく、多くの店が閉店を余儀なくされている。

また、日本食メニューの多様化も進んでいる。ワルントーン氏は、「タイ資本の日本食レストランが生き残るには、ローカルの味覚に合わせたフュージョンスタイルのメニューを取り入れることが不可欠だ」と指摘する。一方、本格的な日本食レストランは依然として日本人駐在員やビジネス層を主要顧客とし、スクンビットや一部のショッピングモールが主要な立地となっている。

原材料価格の高騰も業界にとって大きな課題である。特にロシア・ウクライナ戦争の影響でノルウェー産サーモンの輸送コストが上昇し、価格が40%高騰した。さらに、唐辛子やニンニク、ライムなどの地元食材も、雨季には供給減少により価格が変動しやすい。

今後、タイの外食市場はさらなる競争激化が予想される。フードセレクショングループのスパナット・サッジャラタナクンCEOは、「日本食レストランと中国系レストランの顧客層は異なるため、直接的な競争は限定的だ」としつつも、プレミアムな日本食店は依然として日本からの輸入食材にこだわる傾向があると述べる。

2025年に向けて、外食業界は景気回復の遅れにより厳しい競争が続くと見られる。消費者の価格意識が高まる中、高品質な料理を適正価格で提供するブランドが市場をリードしていくことになりそうだ。

※ソース

Japanese restaurants in Thailand amid rising Chinese competition
Japanese restaurants continue to be the most popular foreign dining choice in Thailand, despite growing pressure from Chinese-backed businesses aggressively entering the market.
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