日産自動車は、タイをASEAN地域における主要な生産拠点として維持する方針を示した。工場の生産体制を合理化しつつ、電気自動車(EV)市場の成長に対応するための投資を継続する。タイ政府のEV産業促進策を活用し、2026年から2027年にかけて新モデルを投入する計画だ。
タイ投資委員会(BOI)は、日産がタイの2工場のうち1つを閉鎖するとの報道を否定した。BOIのナリット・サーダスティーラスクディ事務局長によると、同社の生産体制見直しは「ライン統合」によるものであり、生産拠点の縮小ではない。
具体的には、1975年に設立された第一工場の車両組立ラインを2014年に建設された第二工場へ移し、第一工場はボディ組み立てや部品のプレス加工、物流拠点として再編される。これにより、固定費の削減と新モデルの生産準備を進める。変更は2025年第2四半期から実施される予定だ。
日産はタイ市場の重要性を強調しており、同国の生産拠点はASEAN地域で唯一の完全所有工場である。さらに、タイには日産のASEAN地域本社も置かれており、今後もASEAN市場全体での成長を目指す方針だ。
また、日産はEVおよびハイブリッド車(HEV)市場での競争力を高めるため、タイ政府の支援策を活用する考えだ。2026年から7年間、HEVの物品税を6〜9%に軽減する制度が適用される予定であり、日産はこの優遇措置を受けるために最低30億バーツの投資を行う方針である。さらに、2026年以降の現地生産バッテリーの使用、2028年以降の主要部品の現地調達、高度運転支援システム(ADAS)の搭載、CO2排出量の制限などが求められる。
日産の生産体制の合理化とEV市場への投資は、タイのEV産業の発展に寄与するとともに、ASEAN地域全体の自動車市場にも影響を与えるとみられる。
※ソース
